2007年11月20日

運は数学にまかせなさい

ハーヴァードの大学院性だったときのことだ。
親戚を訪れるために、ニューヨークのジョン・F・ケネディ空港行きのチケットを予約した。

ところが、その便に乗るちょうど一週間前、この空港で大きな事故が起きた。
アヴィアンカ航空の旅客機が一度めの滑走路進入に失敗し、二度めの途中、
燃料切れで墜落して七三人が亡くなったのだ。

最初、私はぞっとした。
こんな悲惨な事故が起きたばかりだというのに、どうして同じ空港に飛んでいけるだろう。
とても安全とは思えない。
残念だが、今度の旅行はキャンセルだ!

けれど、やがて自分を落ち着かせようとロジカルに考えた。
当時私は確率論の数学に関する博士論文を書いていたものの、
その研究はかなり理論的なもので、日常生活とは縁がなかった。

それでも私は考えた。
自分の抽象的な知識を、このなんとも現実的な問題に役立てることはできないだろうか?

そこで手早く計算してみた。
ケネディ空港行きの飛行機は、毎週きっと五〇〇〇便ほどあるだろう。

だから、仮に今度の事故がこの空港の性だったとして(たぶん、そうではないだろうが)、
来週もう一度事故が起きると決まっていたとしても(そんなことは決まってはいなかった)、
私が乗る飛行機に影響が出る可能性はたったの五〇〇〇分の一だ。

この五〇〇〇分の一という確率はそれほど低くはないけれど、高くもない。
これぐらいなら、おそらく大丈夫だろう。
私は予定どおりニューヨークへ飛んだ。
何一つ起きなかった。
確率論の勝利だ!

(本書「第1章 無作為性に囲まれて」 より)


運は数学にまかせなさい
―確率・統計に学ぶ処世術

ジェフリー S.ローゼンタール 著
中村 義作 監修
柴田 裕之 訳
早川書房
(2007/7/20)



著者紹介
ジェフリー・S・ローゼンタール(Jeffrey S. Rosenthal)
1967年生まれの数学者。
トロント大学統計学教授。
数学者のほかにアマチュアミュージシャン、コンピュータ・プログラマー、
即興コメディ・パフォーマーといった顔も持つ。

目次
『運は数学にまかせなさい』を読者に薦める――監修者まえがき
第1章 無作為性に囲まれて――どちらを見ても確率、確率、また確率
第2章 その確率は?――偶然の一致と意外性
第3章 法則を見極める――なぜカジノはかならず勝つのか?
第4章 カードで勝負――ブリッジ、ポーカー、ブラックジャック
第5章 殺人という最も卑劣は行為ー―傾向を読む
第6章 満足のいく意思決定――決断の下し方
第7章 白衣の研究者は信用できるか?――調査から言えること、言えないこと
第8章 そんなことは起きるはずがない――とても低い確率
第9章 コーヒーブレーク――経営が傾いたカジノの話
第10章 五一%対四九%――世論調査のほんとうの意味合い
第11章 二〇回に一九回まで――誤差の範囲
第12章 ランダム性が救いの手――不確実性があなたの味方になるとき
第13章 進化と遺伝子とウィルス――生物界に見られるランダム性
第14章 難問「モンティー・ホール」問題――手掛かりから確立を見つけ出す
第15章 スパム、スパム、確立、そしてスパム――迷惑メールをブロックする
第16章 無知とカオスと量子力学――ランダム性を生み出すもの
第17章 最終試験――確立の観点をものにできたか?
謝辞
訳者あとがき
監修者補足


数字を使ってこの世の中の出来事を起こることを予測する方法、それが確率だと思います。
ですからその方法を知っていた方が何かと便利ではないでしょうか。

日常を見ましても確率はいたるところで使われています。
その代表的なものは天気予報の降水確率で、朝出かけてる前に必ずチェックされるのではないでしょうか。

また、ギャンブルをされる方や、宝くじなどを買われる方も確率にはお世話になっていると思います。

宝くじなどは、当選回数の多い店をわざわざ訪ねたりして購入します。
これも一種の確率の応用のような気がします。

私は株式投資をしていますが、その中でも確率は大いに役立っています。
過去のデータやパターンから確率的に予測し、売買するかどうかを決めています。
しかし私の場合、この予測をよく誤り儲けることができませんが・・・(笑)

そんな日常的に使われる確率をわかりやすく解説したのが本書です。
確率というと難しい数式とかありそうですが、本書にはそのようなものは全くなく、
全くの読み物という感じがします。


本書で取り上げられている事柄で興味深いのが、情報社会のこの世の中で、
その情報に踊らされている人が実に多いというところです。

「パブリケーション・バイアス」と本書には書いてありますが、
確率的には本当に小さいのに、メディアの力によってさぞかしすごいことのように感じてしまうところは、普段生活していて気をつけたいところです。

本書ではテロリストの恐怖として、テロに遭って死んでしまうことを取り上げていますが、
狂牛病や、鳥インフルエンザなどもそうだと思います。

これらの事柄で死んだ人というのは、交通事故に遭ってで死んでしまった人と比べて、
どのくらいいるのでしょうか。

マスコミがあまりにも騒ぎ立てるものですから、
そのことに十分に注意を払わなければならないと錯覚を起こしてしまいます。

そして連日それらの事柄をニュースで大きく取り上げるので、
私たちはいたずらに恐怖すら抱いてしまいます。

しかし、ここで冷静に確率の観点から見れば、そのような事柄に遭うことは大変少なく、
無視してもいいレベルのようです。

本書の中で企業の商品販売のことも書かれています。

ある商品がとても優れているという調査結果なのですが、
その調査のサンプルの仕方によってその商品が、
とても優れた物、便利なものと評価されるということを知って驚きました。

企業は色々なサンプル結果を調整してその商品に都合のよいところだけを、
公に発表すると書いてあるのを読み、鵜呑みにその効用を信じてはいけないのだと思いました。

この他にも、選挙のこと、犯罪のこと、DNA、ギャンブル・・・
と確率的に考えると興味深い事柄が書かれていますので読み応えがあります。

途中著者の短編推理小説などもあり十分楽しめました。

最後にWebで色々な確率についてまとめてあるサイトがありましたので載せておきます。
http://kakuritu.gozaru.jp/sub/fl3.html
色々な確率が載せてあるのが面白いです。

今回の
運は数学にまかせなさい
は323ページと割合ボリュームのある本でした。
少し字が小さめなので若干身構えてしまうかもしれません。

しかし、本書は各章ごとに読み切れるので、好きな見出しから読んでいくことが可能です。
確率と聞くと数学アレルギーの人は引いてしまいますが、
本書には難しい数学式は出てきませんし、文章もかなり砕けているので、
読みにくさはありません。

確かに数字はたくさん出てきますが、それら数字を読み飛ばしても十分理解ができます。

雑学が好きな方にはおすすめできる内容です。


それでは、今日はこのへんで。
最後までお目を通していただき、ありがとうございます。

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2,451歩

今日のおすすめ本

運は数学にまかせなさい―確率・統計に学ぶ処世術
  • ジェフリー S.ローゼンタール、中村 義作、柴田 裕之
  • 早川書房
  • 2100円
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書評/サイエンス





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この記事へのコメント

1. Posted by 本宮とが    2007年11月21日 06:05
つぶ庵さん、おはようございます。

> マスコミがあまりにも騒ぎ立てるものですから、
> そのことに十分に注意を払わなければならないと錯覚を起こしてしまいます。

このことを痛感してます。
ホリエモンの事件以来、マスコミ報道の
いい加減さにはうんざりしています。

少年犯罪に関しても胡散臭さを感じてましたので
本好きの「戦前の少年犯罪」
http://www.buzz-pr.com/book/book/info?id=475
には渡りに舟で応募し、見事に当たりました。
今週末には読んでみるつもりです。(^_^)
2. Posted by つぶ庵    2007年11月22日 05:47
とがさん、コメントありがとうございます。

>このことを痛感してます。
私も「あるある」に思いっきりだまされましたから、
マスコミはもう信じません。(笑)
一人さんは、狂牛病問題が多くのマスコミに取り上げられていたころ、
それほど好きでない牛肉をあえて食べていたそですね。
体に悪いとか、良いという問題ではなく、
その業界で働いている人たちの生活を見据えてでの行動だったそうす。
さすが一人さん、と感銘してしまいました。

>今週末には読んでみるつもりです。(^_^)
書評の方、楽しみにしています。

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