2007年05月13日

窮地に取引先を大逆転 ― 日経ビジネス

株式会社武蔵野をご存じでしょうか?

セブン・イレブンにお弁当やパンを納入している食品会社です。
あのビニールの包装をはがして海苔を手巻きにするおにぎりとか、
食パンのミミをとったサンドイッチを考案したのもこの会社だそうです。

最近では、セブンイレブンやイトーヨーカドーで販売している食パン
「焼きたて直送便 味わい食パン」がヒットしました。

今でこそ年商が667億円もある会社に成長しましたが、
かつては会社存亡の危機に見舞われたこともあるそうです。

それは28年前の1979年、まだコンビニがなかったころ、
武蔵野は大手パンメーカーの山崎製パンから業務提携解消を告げられたのです。

実はその3年前の1976年に山崎製パンは、武蔵野の商品開発能力を高く評価し、
武蔵野の商品を独占するのが目的で、業務提携を申し込んできたそうです。

武蔵野としても全国に販売網を持つ製パン会社とがっちり手を組むことで、
安定的な成長が見込めたので、資本提携を受けたのです。

しかし、わずか3年で状況は一変してしまいました。
きっかけは山崎製パンの経営者の交代だそうです。

背景には、今後の成長が期待できる弁当やサンドイッチを取り込みたいという意向が見えていたそうです。

山崎製パンは、同社が持つ武蔵野の株式45%を武蔵野が買い取るか、
武蔵野の社長安田定明氏が持つ55%の株式を譲渡するか「1週刊以内に回答せよ」
と迫ってきたそうです。

安田氏はひどく悩んだそうです。
その当時、年商は60億円になり、パートを含め1500人規模の会社に成長していたので、
山崎製パンとの取引がなくなると、会社が立ち行かなくなってしまうからです。

その一方で、山崎製パンに会社を譲渡したら、自分はともかく、
社員がいつまで雇用してもらえるかわからないのです。

「これは経済戦争だから、一番苦しいのは安田さん、あんただよ。
あんたが耐えられるなら、俺は支援するよ」。
安田氏の顧問弁護士の言葉に勇気づけられたそうです。

安田氏は戦うことを決意し、山崎製パンとの取引を徐々に減らして食いつなぐ間に、
新しい取引先を開拓する作戦に出ます。

しかし、山崎製パンとの契約には、資本関係を解消するとすぐに取引停止となる条項があり、
交渉は難航しました。

当時、安田氏は山崎製パンとの取引が打ち切られ、
会社が倒産するという夢に毎晩うなされたそうです。
そして決まって午前3時に初と目がさめ、眠れない日々が続いたそうです。

そんな様子を見かねた奥さんは、
「お父さん、大変なのはわかるけど、命まではとられないでしょう」
と言い、安田氏この言葉に我に返り、
「夜はぐっすり寝て、昼にアクションを起こそう」
と割り切ると、不眠症から解放され、活力がわいてきたそうです。

安田氏が新たな取引先に目をつけたのはコンビニです。
特にセブンイレブンは約600店舗を展開し、
弁当の売り上げを伸ばしていることに強い関心を示しました。

しかし、安田氏にはセブンイレブンに接触する手がかりがなかったそうです。
でもチャンスがなかったわけでもないようです。

後で分かったそうですが、セブン&アイ・ホールディング会長の鈴木敏文氏(当時、専務)
が武蔵野に興味を示し山崎製パンに紹介を打診していたことがあったそうです。

この時、山崎製パンは武蔵野との提携関係を盾に断っていたそうです。

救いの手を差し伸べたのは、広告代理店三友エイジェンシー社長の益田泰子氏です。
益田氏は三井物産の初代社長の益田孝氏のひ孫にあたる方で、
安田氏がイトーヨーカ堂グループと三井物産が親しいことを知り、知人から紹介を受けたのです。

益田氏は知人の紹介とはいえ、なぜ初対面の安田氏を助けようと思ったのかとの問いに、
「一生懸命に、正直に、仕事に取り組んできた顔をしていた」。

初めて会った時の印象をこのように振り返ったそうです。


セブンイレブンとの取引が始まったのは、1981年5月。
一方、山崎製パンとは8ヵ月に及ぶ交渉の末、
3年かけて取引額を減らす方向で落ち着いたそうです。

パン小売りからコンビニへと取引先が変わっても、
安田氏は品質管理体制には自信を持っていました。

ところがセブンイレブンが求める品質管理にはもう一つ別の要素が加わっていたそうです。
商品の安全性だけでなく納品の厳守が要求されていたのです。

1日2便、各店舗に商品を発送するのですが、運転の疲れもあり、
店舗に渡す商品を間違えてしまうと、担当者から叱られます。

取引を開始して1年後、あまりの過酷さからドライバーが出社拒否。
安田氏自ら眠い目をこすりながら配送をしたのです。

にもかかわらず、欠品や遅配があると担当者がクレームを伝えに来ます。
ある日、我慢の限界がきて、担当者の襟首をつかんで、
「もう一度、言ってみろ。文句があるんなら、おまえも手伝え」
と怒鳴ったそうです。

通常、こういうトラブルがあると険悪なムードになってしまうそうですが、
今回は逆に、安田氏が真剣に要求に答えようとする誠実さゆえの衝突と判断されたそうです。

セブンイレブン側の評価も高まり、山崎製パンとの契約が切れた時、
セブンイレブンとの取引額は、山崎製パンのそれを上回り70億円になったそうです。

衝突はしても、本人はあふれんばかりのパワーで必死に努力しているから、
周りは認めます。
これが、安田氏生来の魅力なのだそうです。

(日経ビジネス2007.5.14号P138〜P140 より要約)


今ではどこでも同じ方式ですが、
セブンイレブンのおにぎりの包装は常に一歩先を進んでいました。

産地直送パンもセブンイレブンが最初だと記憶しています。

常に業界のトップを走り、リードしてきたセブンイレブンですが、
その陰でこのような会社の存在も覚えておきたいですね。


それでは、今日はこのへんで。
最後までお目を通していただき、ありがとうございます。

---------
22,190歩

参考図書
日経ビジネス
(2007.5.14号)





tsubuan358 at 23:55 │Comments(2)TrackBack(0)clip!日経ビジネス 

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この記事へのコメント

1. Posted by 本宮とが    2007年05月14日 05:43
つぶ庵さん、おはようございます。

私は毎日のようにセブンイレブンを利用していますので
その利便性と飽くなき探求心はいつも感嘆の思いです。

株式会社武蔵野。
全く存じ上げない会社でした。
> あのビニールの包装をはがして海苔を手巻きにするおにぎりとか、
> 食パンのミミをとったサンドイッチを考案したのもこの会社だそうです。

オ〜〜、あの会社ですか!?
今度おにぎり買ったら、製造元をよく見てみます。

> 「一生懸命に、正直に、仕事に取り組んできた顔をしていた」

これですね!!
こういう生き方をしていれば、誰かが見ていてくれるということですね。
とっても勉強になりました。

いい話をありがとうございました。<(_ _)>
2. Posted by つぶ庵    2007年05月14日 23:55
とがさん、コメントありがとうございます。

>その利便性と飽くなき探求心はいつも感嘆の思いです。
確か昔、「なぜセブンイレブンの商品は値引きしていないのか」
との質問に鈴木敏文氏が、「利便性を追及しているので、
そのためにコストがかかる」
と言っていたのを何かの記事で読みました。
確かに業界をいつもリードしてきてましたよね。

>今度おにぎり買ったら、製造元をよく見てみます。
今度、おにぎりの裏を見てみてくださいね。
全国展開しているようなので、たぶん武蔵野だと思います。

日経ビジネスに写真が載ってましたけど、
ホント、真面目そうなお顔をしていました。
あっ、そうだ!
明日会社でスキャンして、写真をアップしておきますね。
URLは、アップしたらここに書いておきます。



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